バシー海峡横断 その3 シュミレーション
昼を回る頃から、予想外に、太平洋への流れが強くなる。
これは、強い西風の影響もあったかと思われる。
海は北へは流れず、東へ時速3kmで流れていた。
今までフィリピンから渡ってきた経験を基にすれば、今は西よりの流れの筈。
そして、黒潮が押している為、北西に時速5㎞くらいで流れているとイメージしていた。
それが、今は逆の方向、東に流れている。
どうしてだ。
予想外のことは、よく起こる。
それを理解していることが、経験だと思う。
まずは、大海に持っていかれないように耐えてなくてはいけない。
耐えられなければ、即、漂流だ。
太平洋へ流れるのを抑えるため、進行方向を西北西に向けた。
時速2~3㎞で西北西に進んでいる。
残り70km。
単純計算で、35時間漕ぎ続ければ、到着する。
海が、西に流れている筈の時間帯に東へ海が流れている。
ならば、本来、東に流れる筈の時間帯に突入すれば、高速で東へ流れるというのか。
35時間で、確実にパドリング出きれば問題ないが、こういう場合、最悪の事態を考える。
これは、焦りや迷いではない。
冷静に考えている。
僕は、普通の人だが、恐怖に対するトレーニングは出来ている。
途中まで、流れに耐えながら進み、力尽きたらどうするか。
流れと風に逆らいながら漕ぐのは、体力を消耗する。
消耗してから、対策を考えたのでは遅い。
これから5時間のうちで、流れが変わらない、もしくは強くなるとする。
そうなれば、与那国島を目指すしかない。
時速6㎞の航行を想定。
距離は350kmくらいだろう。
時間は70時間とした。
東へ流れるのを受け入れつつ、進路は北に向け漕ぐ。
まずは、流れに逆らわない。
おそらく、北東へ進むだろう。
220km漕いだ時の経験から、倍の航行は可能だ。
その場合の、休憩のとり方、食料、水分補給の方法などどうするのか。
腕を動かし、波を乗り越えながら頭でシュミレーションしていた。
長時間の航行の同じ姿勢でいることが、一番のストレスになるものだ。
海で、体を伸ばせる状況であれば、出来るだけ海に入ろう。
そして、服の擦れと手のマメに対する注意も必要だ。
肩への負担も大きくなることを考えて漕ぐ。


コメント