フィリピン~台湾遠征 その20

バシー海峡横断 その3 シュミレーション

昼を回る頃から、予想外に、太平洋への流れが強くなる。

これは、強い西風の影響もあったかと思われる。

海は北へは流れず、東へ時速3kmで流れていた。

今までフィリピンから渡ってきた経験を基にすれば、今は西よりの流れの筈。

そして、黒潮が押している為、北西に時速5㎞くらいで流れているとイメージしていた。

それが、今は逆の方向、東に流れている。

どうしてだ。

予想外のことは、よく起こる。

それを理解していることが、経験だと思う。

まずは、大海に持っていかれないように耐えてなくてはいけない。

耐えられなければ、即、漂流だ。

太平洋へ流れるのを抑えるため、進行方向を西北西に向けた。

時速23㎞で西北西に進んでいる。

残り70km

単純計算で、35時間漕ぎ続ければ、到着する。

海が、西に流れている筈の時間帯に東へ海が流れている。

ならば、本来、東に流れる筈の時間帯に突入すれば、高速で東へ流れるというのか。

35時間で、確実にパドリング出きれば問題ないが、こういう場合、最悪の事態を考える。

これは、焦りや迷いではない。

冷静に考えている。

僕は、普通の人だが、恐怖に対するトレーニングは出来ている。

途中まで、流れに耐えながら進み、力尽きたらどうするか。

流れと風に逆らいながら漕ぐのは、体力を消耗する。

消耗してから、対策を考えたのでは遅い。

これから5時間のうちで、流れが変わらない、もしくは強くなるとする。

そうなれば、与那国島を目指すしかない。

時速6㎞の航行を想定。

距離は350kmくらいだろう。

時間は70時間とした。

東へ流れるのを受け入れつつ、進路は北に向け漕ぐ。

まずは、流れに逆らわない。

おそらく、北東へ進むだろう。

220km漕いだ時の経験から、倍の航行は可能だ。

その場合の、休憩のとり方、食料、水分補給の方法などどうするのか。

腕を動かし、波を乗り越えながら頭でシュミレーションしていた。

長時間の航行の同じ姿勢でいることが、一番のストレスになるものだ。

海で、体を伸ばせる状況であれば、出来るだけ海に入ろう。

そして、服の擦れと手のマメに対する注意も必要だ。

肩への負担も大きくなることを考えて漕ぐ。

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