宮古遠征 報告8 うねる海

宮古遠征 報告8 うねる海

朝、5時起床。


起きれば少し肌寒い。
雨がぱらついていた。
各自、朝ごはんを食べ、出発の準備をしている。
忘れ物がないか、装備類は大丈夫か。
特に、緊張感は無かった。
自分達は行ける、という確信を持っているのだと思う。
頼もしい。

今日、自分は、新しい課題を持って出発した。
船の動かし方を変えてみようと思ったのだ。
これは、森田&滝川艇の船の動きをみて、自分と操船の違いを見付けた為。
彼らの船は、とてもスムーズに波を越えていた。

今まで、僕はガシガシ漕いで、波がくればブレイスし、受け止めていた、。
波を特別なものとしない。
昼漕ぐときも、夜間漕ぐときも、同じ航行スタイルだった。
夜は、波を見ながら対応出来ない。
いつでも、波に対応出来ないといけないと思っていた。
その為、自然と身についた漕ぎ方である。
しかし、タンデム艇では、シングルと同じように、動かせなかった。
技術が伴っていれば、出来たのだろうが、今は駄目だった。
波を見て、波にあわせて、カヤックのコースを選んで進む、基本のパドリング。
波をまともに受けないようにすること。
うまくいくかな。

相棒の亀ちゃんも、自分で工夫していた。
ペリカンケースをデッキの前方に動かしている。
これで、パドリングの邪魔にならない。
それぞれが、海に出るたび、上達していく。
自分で考えて、解決策を発見し、改善していくことこそが、大切だと思う。

写真by八幡

島影に入っている間は、おとなしかった波も、すぐに高くなってきた。
普段、見える筈の石垣島は、雲にかくれて見えない。
今日も、目的地が見えない航行だ。
前半の波は、一昨日の横断と変わらないものだった。
皆、波をいなしていく。
自分は波を見ながら、微妙に船を動かし、こちらも快調。
亀ちゃんも、好調。
波の直撃が激減して、楽だ。

三浦&藤井艇は、波をかぶる回数は多いものの、うまく抑えている。
森田&滝川艇は、変わらず安定した走りをしていた。

島が見えて来た。
宮古側の沖合いから、石垣島を見たのは始めてだが、やはり大きい。
残り半分。
ナビゲーションもうまくいっていた。
流れも小さい。
今のところ、イメージどおりだ。

しだいに風が上がってきた。
後にわかる事だが、石垣北部の平久保灯台では、風速14mの記録が残っていた。
波も大きくなっている。
ただ、これは危険な状況ではない。
カヤックの航行能力、自分達の技術を越えるものではなかった。
この海況でも、恐怖に漕ぎが縮こまっていないことが、一番重要だ。

風や波で、コントロールを失う状況こそ、一番避けるべき事態である。
これは、船でもカヤックでも同じだ。
ただ、シーカヤックという乗り物は、機械ではない。

穏やかな海でも、コントロール出来ない人もいる。
シケでも動ける人がいる。
乗り手の技術と精神力で、性能がとても変わる。
百人十色の性能があると言って良い。
だから面白いし、判断も難しい。

ときに壁のように盛り上がる波。
その崩れる回数が増えてきた。
海のパワーの直撃にあう度、ところどころで叫び声があがる。
「ウォ~ウゥ」
声を出すことで、貯めた力を吐き出し、また気合を入れなおす。
思えば、一人の遠征の時も、大声をだしている。
文明から離れて暮らす人々も、狩にでたとき、大声をだしていた。
これは、人間の基本的な活動かもしれない。

僕と亀ちゃん艇の試みは、成功していた。
崩れる波頭を、事前に察知してかわしていく。
仮面ライダーが、爆発する台地をバイクで避けながら走るようだ。
これは難しいことではない。
見れば、誰でも崩れる波と越えらる波の違いがわかる。
ただ、夜間航行になった場合、この作戦は使えない。
やはり、波をまともに受けながら、航行しなければいけない。
これはこれで、練習が必要だな、そんな事を考えながら漕いでいた。

「うわ、やばいの来たわ」
亀ちゃんに言うのでもなく、独り言。
丁度、そこに三浦&藤井艇が突入していくところだった。
そのやや下手には、森田&滝川艇。
これは、やられると思いカヤックを旋回し始める。
白い壁が、カヤックを丸ごと飲み込んだ。
パワー最大のところであたってしまった。
波が過ぎると、三浦&藤井艇は、沈していた。
森田&滝川艇は、崩れた後の波を被っていたがセーフ。
駆けつけると、今回は、前回以上に2人に余裕があった。
「ちくしょ~、やられちゃったよ~、ふふふ」
顔は笑っている。
三浦さんは、帽子を飛ばされていた。
排水。
再乗艇。
「いや、今のはでかかったですね」
「ブレイスしたけど跳ね返されたよ」
誰も慌てない。

写真by八幡

炸裂する波が増え、森田&滝川艇も幾度と無く波を被る。
「久しぶりにバックプッシュロールしました」
森田さんが笑いながら、話す。
川のカヤックならともかく、この海況の中、タンデムで行える力は素晴らしい。
基本技術と、その応用は、現場で使えて始めて意味がある。
森田さんの技術は確実だ。

その後、三浦&藤井艇も、すっかり波に慣れているように見える。
2
人の動きが、シンクロしていた。
ブレイスの動きもスムーズだ。
もう大丈夫。

島が次第に近づき、リーフで炸裂した波が空中に舞っている。
風は予報どおり強い。
しかし、思ったほど、リーフ波は大きくなかった。

写真by森田


それでも、安全にリーフの亀裂から、イノー(内海)に入った。
ここは、今までの波が嘘のように平和だ。

1130分。
予定通り。
素晴らしいチームパドリングだった。
今は、漕がなくとも、時速6kmで南に進んでいる。
外洋の緊張感と内海の安心感。
この落差が心地よい。
僕等は無事、渡ってきたんだ。

久松5勇士が到着した伊原間の浜は、もう目の前だ。


写真by雪

午後1時。
浜には、石垣の友人とちゅらねしあのスタッフ雪ねぇが待っていた。
ありがとう!!!
きっと心配しただろうと思う。
帰ってきたよ。

午後130分 石垣島 伊原間 到着。

航行時間、7時間30分、航行距離47kmだった。

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