サブタン島
朝、目覚めると5時30分だった。
体が冷えていたため、パドリングジャケットを着て寝ていたのだが
暑くて目が覚める。
テントから出てみると、以外にも集落が近くに見えた。
昨夜、明かりは何も見えなかった。
電気は、来ていないのだろうか。
向こうから、第一村人。
話をすると、テントを張った海岸は、村の畑に行く途中の海岸らしい。
バリンタン海峡を越えて、昨夜到着したこと、怪しいものではないことを伝える。
「ココヤシの実は好きか?」
「好きです」
よしきたと、集落にもどり、すぐさまココナッツを取ってきてくれた。
僕は、魔法のジュースをガブ飲みする。
疲れた体には、最高だ。
お礼に手持ちの食料を、持っていってもらった。
昨日は19時間のパドリングだった。
130kmの距離を漕いだわりには、疲れが少ない。
黒潮が押していたからだろう。
波が大きいところがあったが、常に高い状態が続くわけではない。
さらには、海は全体的に北へ北へ動いている。
漂流しても北へ向かっていく。
バリンタン海峡を終えて、バシー海峡への見通しがついた。
イメージどおりの横断に、手ごたえを感じる。
あとは天候だ。
今回、耳にあたる風が、ぼぉーと音を立て、白波が海面を覆っていた。
おそらく西風が7m以上吹いていただろう。
これ以上の風は避けたい。
村人が、次第に集まってきた。
好奇心が強い者が、話しかけてくる。
泉谷しげるのような風貌の男である。
どこから来たのか?何物か?どこにいくのか?
一通りの話をすると、その男は、村人に事態を伝える。
文化の接触、とはこういう形で行われていたのだろうな、と思う。
チャバヤン村を紹介すると、連れていってくれた。
朝6時、日が昇っている。
皆、朝早くから動いていた。
夜は、早く寝るのだろう。
この集落は、ストーンハウスという昔ながらの家に住んでいる人が多い。
石を積み上げた家である。
骨組みは、入ってないように見えた。
外壁をセメントで固めているが、昔はどうしていたのだろうか。
屋根は、茅葺のようだ。
窓がいくつかついているが、中は暗いだろう。
風も通らない、クーラーはないのでさぞ暑いだろうと思う。
しかし、これは台風対策なのかもしれない。
ここは、台風ベルトの上である。
集落の小道は、人が丁度、すれ違って歩けるくらいの幅になっていた。
大昔に作られた道は、車が通ることを、想定していない。
子供達が、道で寝転がって遊んでいた。
村の背後は、断崖絶壁になっている。
正面は、海。
砂浜には、小さなエンジン付きの船が上がっていた。
船を引き上げる為のワイヤーがある。
ウィンチがあるのかな。
ワイヤーをたどってみると、人力で巻き取るようになっていた。
4メートル程の横棒の中心に縦軸があり、
それを、人がぐるぐる回して、ワイヤーを巻き上げるのである。
ワイヤーがなかった頃は、ロープを作りなどもしていた筈だ。
映画で見たことがあるような、昔ながらのシステム。
バリンタン海峡を越え、サブタン島に入った途端に、物が増えた。
バタネス諸島の中心、バタン島には飛行機が飛んでいからだろう。
バタン諸島の南にある、ここサブタン島も、観光客が来るのだ。
観光案内の仕事も多く見られる。
感覚としては、東京から与那国島に来ているような感じなのだろうか。
途中のバブヤン諸島には、観光のインフラがない。
昔ながらの生活を続けているたのは、インフラの問題が大きそうだ。
文化の恩恵を情報として知っていながら、電気がない生活の地に生きている海の民。
これに満足しているか、不満があっても抜け出せないのかはわからないが、
食料が豊富にあり、水があり、子供育つ、もっともシンプルな生き方だ、と思った。


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