夜の9時を回る頃、前方にわずかな光が見えた。
街の明かりだ。
うねりによって、見え隠れしているものの、間違いない。
ライトをつけて、GPSを確認する。
残り16km。
はっと気付く。
雲の下に見える黒い塊。
雲だと思っていたのは、島だった。
これこそがサブタン島だ。
遠くに見えているのは、バタン島の街の明かりなのだろう。
地図と本物の島のイメージがずれていた。
御褒美をもらったような気分。
この時点で16時間、漕いでいたことになる。
肉体的には、まったく問題なかった。
かなり調子が良い。
あと3時間もかからないだろう。
島の東岸に入れば、風が止まった。
ライトで岸を照らしてみる。
波が、岩礁にくだけ、上陸できる場所がない。
もう少し先に行こう。
沿岸を北上しても、街のあかりはない。
見えていた光は、さらに北にあるバタン島のあかりであった。
バタン島へ行くには、もう一つ小さな海峡を渡らなければならない。
サブタン島で上陸できる場所を探そう。
安心してるので、ゆっくり漕ぐ。
寒さがやってきた。
もう23時を回っている。
体が冷え切る前に、上陸したい。


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