星がなければ、ライトをつければいいのでは、という人がいる。
ライトをつければ、手元だけは明るくなるが、周りがまったく見えなくなる。
うねりがブレイクした海で、波の動きがみえないのは危険だ。
夕刻、流れは北西から北に、そして西風が強くなり、北東に流れるようになっていた。
進路は、北北西に向けている。
午後6時で、残り35km。
平均時速10kmで漕いできた事になる。
ここまでは、イメージどおりに来ていた。
暗くなるころには、肉眼で島をとらえられるだろう。
現在の航行スピードは、時速7kmになっていた。
島に近づいて、黒潮の本流は外れたのかもしれない。
20時までに島の明かりが見えれば、しめたものだが、灯台はないだろう。
後方からタンカーが南から北へ登っていく。
右舷がみえている。
良かった、今回もあたらずにすむ。
あれは、中国、もしくは台湾へ行く船だろうか。
あたりが暗くなり、手元のコンパスすら見えなくなった。
北の空は、雲に覆われている。
一番星が、後方に出ていた。
とりあえず微妙な雲の濃淡で方向を決める。
波が、黒い壁となって目の前を通過する。
うねりが崩れれば、暗闇に白い残泡。
それを突き進むカヤックを見て、俺は進んでいるぞ、と鼓舞する。
黒い壁を見すぎてはいけない。
宮古島~久米島へ渡ったときの教訓は、今年も生きている。
崩れる波を、恐れる必要はない。
波に対して、体は自然に動くようになっている。
今は早いピッチで、パドルを振り回す必要はない。
確実なパドリングこそが重要だ。


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