フィリピン~台湾遠征 その10

バリンタン海峡横断

進路を北に向けてから、順調な航行を続けていた。

午後に入り、西風が強くなっている。

波も大きくなっていた。

後から、そして左手から、水を被ることがあるが、火照った体には気持ちよい。

前方に見える大型タンカーは、横腹を見せている。

この船に、ぶつかる心配はない。

気がかりなのは、うねりと波が大きい分、遠くのタンカーの発見が遅れることだ。

接近してから、気付いたのでは遅い。

いつも以上に、周囲に気をくばらないといけないかった。

途中、シイラが1匹だけ青い背中を光らせながら黒潮の中を走っていった。

周りを見たが群れではない。

鳥が飛んでいるわけでもない。

魚は、何を感じて泳いでいるのか、と思う。

この旅、サメにも亀にもイルカにもあってない。

それだけに、シイラの泳ぎが美しく見え、生き物が確かに居ることが心強く思えた。

3時間後、またタンカーが見える。

今度は、自分のやや後方を横切った。

前回見たタンカーの航路と同じような気がする。

その後、もう一隻、はるか後方にタンカーを見た。

どうも、西へ向かうタンカーは、バリンタン海峡の南よりの航路をとっているようだ。

空に雲が広がっている。

今日は、月が出ない。

もし星が出なければ、はじめての闇夜の外洋である。

今まで避けてきた状況。

選択肢はない。

今夜、暗闇で漕ぐ、と覚悟する。

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