フィリピンと台湾を繋ぐ海とは?
海を知っている人間が、バシー海峡の話をすれば、皆、同じことを言う。
「ここは荒れる」
西に南シナ海、東に太平洋が広がっている。
この東西の海をつなげているエリアが、今回の舞台だ。
5000メートルもの深度をもつ広大な海が、わずか400㎞の海峡で交差する。
さらにこの海峡は、浅い。
干潮と満潮の差で、膨大な量の海水が、東へ西へ移動する。
浅く、狭い海峡に、深海からやってくる海流が集中する場所では
流れが早くなり、波が大きくなるのは、世界共通である。
海流と波の話は、台湾–与那国遠征の遠征報告で詳しく書いている。
時間があれば、そちらを参照してほしい。
今回の難しさを作り出している理由がもう一つある。
フィリピン ルソン島の東側を、南から北へ時速3-7kmで流れている。
黒潮源流だ。
大きな潮流に絶えず黒潮がぶつかってる。
途中、サメもタンカーも多いというのが、特徴だろう。
水深5000m、時速6、7kmという高速で流れる波プールの中に、
違う方向から、流れる波プールが交錯している。
ぶつかりあった流れは、さらに大きな波を作るだろう。
巨大な流れる波のプールを400km横断するイメージ。
ひとたび風が吹けば、すぐに海面は真っ白になるらしい。
特に北風が吹いたら、恐ろしい海になるという。
10メートルの3角波が、大型船を揺さぶるのだとか…..
シーカヤックにとっては、有難い情報は少ない。
恐ろしい話ばかりが、耳に残る。
どういう作戦で、渡ろうか悩む。
まず始めに現れるバブヤン海峡。
島から島の間は、40㎞。
ここでは、黒潮の影響は少ないだろう。
距離はたいしたことないが、気をつけるのは潮流だ。
おそらく上げ潮と下げ潮で、流れが逆になる。
これは、現地で情報を集めれば、問題ないだろう。
漕いでいて知りたいのは、どれくらいの速度で流れるのか、ということ。
詳細は、行ってみないとわからない。
周りには、他の島が点在している。
背後に見える筈のルソン島は、常に大きな的になる。
縦断に失敗しても、死ぬことはない。
逃げ道は、沢山あるのだ。
続いてバリンタン海峡。
フィリピンの人々が恐れている荒れる海である。
距離にして100km。
バシー海峡が難しいのは、多くの人に知られているが、
僕は、バシー海峡より難しいかもしれないと考えていた。
黒潮の影響を受け始める位置が、どのあたりなのか、
それがまったくわからない。
東西の流れは、バブヤン海峡より強いだろう。
これも、どこまで流れているかわからない。
出発したら、戻れない。
最後まで行くしかない。
こういう海は、難しい。
天候の読み間違いは、最悪だ。
どんなことがあっても漕げなくなるような事態は、なんとしても避けないといけない。
バリンタン海峡を漕ぎわたれれば、バシー海峡の予測がしやすくなる。
今回の遠征の鍵を握るのは、この海峡だろうと思った。
最後に待ち構えるバシー海峡。
距離にして130km。
黒潮が、潮流にまともに当たる海峡だ。
うねり、波、風、すべてが今までの経験してきた海を越えているだろう。
やはり複雑な流れが、どこまで続いているのかわからない。
難しさを増幅させているのは、「わからない」事が多い為である。
おそらく、太古の人々は、普通に往来していたと思うのだが、
シーカヤックで渡った記録がない。
人力で海を渡る力は、悲しいほど小さい。
海のパワーには、必ず負ける。
どこまで人が海と向き合い、耐えられるか、これが今回のテーマになりそうだ。


コメント
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はじめまして、
なんか私には途方もない壮大な探検話に聞こえてしまうのですが、現実的に実現するために冷静な知恵絞りがすでにスタートしているわけですね。(死なずに成功するための、)
海流って、岬の先端とかで速くなるのは意識してましたが、深度が深いところから浅くなるところも当然、同じことなんですね。
昔、富津岬で大潮の時、川の急流みたいになって、自分も含め、たくさんのウインドサーファーがが流されました。
ぼくはたまたま、強風をつかんで自力で帰還できました。だけどカヌーだったら帰れなかったと思います。
そんな富津岬は定期的に水死する人も多いです。
深度5000mが急に浅くなるなんて、恐ろしいですね。
平面的な富津岬にくらべて、立体的だから、動く水の量も圧倒的に多いはず。。
サーフィンでも、ちょっとしたうねりが、リーフに懸かると、突然巨大波になりますからね。。
10mの波っていうのも、コンディションしだいで簡単に発生するんでしょうね。コワイ。。
横断に先立って、死の恐怖はどれくらいですか?
家族は反対しませんか?
今までの成功体験の積み重ねがあるから、横断に成功するイメージ、ワクワク感のほうが勝るのでしょうか。
がんばってください。
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コメントありがとうございます。
出発前のイメージ、精神面が成否の鍵だと思われます。怖いのは、皆と同じです。ただ技術的に出来る人は、沢山いるでしょうし、誰でもわたれると思いました。昔の人も、そういう感じで渡っていたのでしょうね。