フィリピン~台湾遠征 その17

フィリピン最北の島 Yami Is

530分、バタン島の人々に送られて出発した。

皆、本当にバシー海峡を渡れるのだろうかと半信半疑である。

本気で、心配してくれる人がいる。

しかし、僕の心の中に不安はなくなっていた。

何故かわからないが、いけると思っていた。

出発して港が見えなくなる頃には、島の周囲は断崖に囲まれていた。

陸から沿岸に降りることは出来ない。

海から上陸も出来ない。

逃げ場はない。

いよいよだな、と思う。

バタン島から北には、5つの島が点在している。

一番近くの、大きなイトバヤット島は、沿岸全て絶壁。

カヤックでは上陸不可能だ。

残りの4つのうち、2つだけ上陸可能という情報。

しかし、ビーチが広がっているわけでなさそうだ。

現地に行って見るしかない。

もし、上陸できなければ、海に潜ってアンカーリングし、錨泊することになるだろう。

上陸地点があると情報のあった島に接近する。

確かに隆起珊瑚の岩岸の上にビーチがあった。

ここを上陸するには、覚悟が必要だ。

西から吹き付ける風に波が砕けている。

うまく波をかわして岸につけても、地面は隆起珊瑚。

必ず引きずる必要がでてくる。

船には、水と食料、他、生活道具が満載していた。

最悪、波をもらったら、船体にダメージを受けてしまう。

しばらく様子をみていたが、良い状況にはならない。

他のポイントを探そう。

東は風裏になっているので、こちらに小さくても上陸できる場所があればいいのだが。

東から北に回るも、上陸ポイントは見当たらない。

もう一つの島、最北のヤミ島へ行こう。

もし、見つからなかった諦めるしかない。

どの島も同じような風貌。

木が低く風あたりが強いのだろう。

平坦な場所が少なく、土もほとんどないように見える。

水もない。

これは、無人島だけあって、人が住みにくい場所だと納得する。

ヤミ島を東から北へまわる。

状況は、あまり変わらなかった。

波の高さは腰。

波打ち際は、珊瑚の岩盤。

波をうまくかわし、次の波が来るまでに、安全地帯まで引きずるしかないのか。

考える。

もっと確実な方法はないだろうか。

カヤックだと降りる動作とカヤックを引きずるまでの動作の間に時間がかかりすぎる。

絶え間なくやってくる波を、受けてしまう可能性もあるのだ。

少し遠くで、カヤックから海に飛び込む。

バウにつけたロープを持って、先に人だけ上陸する。

波を見ながら、カヤック本体を引っ張る。

波が過ぎた後、一気に安全地帯までカヤックを引き上げる。

この方法が、ベストだろう。

暖かい海ならではの方法だ。

透明度の高い海に飛び込む。

気持ちいい。

水温は28度といったところだろう。

青ブダイが泳いでいた。

波に打ち付けられないように上陸。

一気に上まであがる。

ひとまずホッとした。

のんびりしていたら、人間も危険なのだ。

珊瑚の地面で転がされれば、どうなるのか、わかっている。

体中、傷だらけだ。

ヘタすれば、深く切れる。

バシー海峡横断どころではない。

小さな波をやり過ごし、ブレイクポイントから一気にカヤック引き込む。

ガリガリガリ。

船体が、嫌な音をたてている。

しかし擦れ傷くらいなら問題ない。

カヤックが重い。

60kgはあるだろう。

船が波に乗って、落ちたら大変なことになる。

波のかからないところまでは来た。

カヤックは、30度程、空を向いている。

ここは平坦でないのだ。

引き上げも大変だった。

全体重を使って、引き上げる。

足元がわるい。

誤って、手を付いただけでも、手が切れてしまう。

隆起珊瑚の岩肌とはそういうものだ。

なんとか成功。

今日は、バタン島からヤミ島まで、70㎞、11時間漕いだことになる。

体の疲れは、さほどない。

風が強かったのが気がかりだ。

しかし、この島の長居はできない。

明日の朝には、出発だ。

梅雨明け間近の前線は、台湾の北に居る。

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